第9話:夜の女性との出逢い「なぜ、そんなに優しいんですか?」

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第9話:夜の女性との出逢い
「なぜ、そんなに優しいんですか?」

第2部のストーリーは、高校教師の話から離れ、一人の男としてのプライベートの生活について、お話したいと思います。

これから書く話は、本当に誰も知らない話で、ちょっと、勇気が入ります。それに、恥ずかしくもあります。

でも、頑張って書きますね^^


ススムは、日々の仕事が忙しく、全くと言っていいほど、自由な時間はなかった。それでも、教師という天職に携わっている喜びがあり、自分の生活をないがしろにしていても、全然大丈夫だった。

しかし、、、


一人暮らしの寂しさから、フラフラと夜の街に繰り出す。

ススムは、自分の腕時計の針を、眺めていた。まだ午後7時20分だった。

もう家に帰ってもいいけど、家に帰っても、誰もいないし、明日は、顧問をしている高校のサッカー部の練習もない、久しぶりのオフの日曜日。

といって、誰か友人と会うとか、何か楽しみがあるわけでもない。
(友人はいても、面倒くさいと思い、一緒に遊びに出かけることは、皆無でした。)

いつもなら、英語の指導教案の作成、サッカー部の練習メニューの作成、それが終われば、英語教師として、自分の英語力向上のための英語学習。後は、読書、映画鑑賞くらい。

ぜんぶ、一人でやるものばかり。いっそのこと、明日の日曜日も何か仕事があれば、一人で家にいることもないのに…。
独り身の寂しさといえば、それまでですが、私は、生徒たちのために、生きているのだから、プライベートの生活はどうでもよい、と思っていました。)

よく生徒たちに訊かれたことがあります。

 

「先生、恋人はいないんですか?」

「おう、いるよ。生徒たちみんなだよ。」

「いやだ、きゃあ」(笑)

 

そんなことを、つらつらと思い、ススムは、帰宅せずに、ブラブラと街を歩き始めた。

気がつくと、ネオンの灯りの通りを歩いていた。

そのススムの腕を掴んでくる男がいた。その男が

「お兄さん、安くしておきますよ。どうですか、お飲みの方は?」

こんなことをススムに訊いてきた。何をこの男は言っているんだ。ちょっと、何を言っているのか
わからなかった。(サンドイッチマン風にw)

「はい?なんだかわからないけど、とりあえず、僕の腕を離してくださいよ。」

ススムは、嫌なそうな素振りを見せて、言った。

しかし、その男は、腕を離すどころか、ススムをどんどんと引っ張り、店舗の入り口まで来た。

「ねえ、いいでしょ。1時間、5000円。」

その店舗の店構えを見て、やっと、ススムは、何のことか、わかった。でも、高い!

(クラブの店の誘いだった。)

本来なら、こんな場所に入るなんて、もっての他と思っていたススムだったのに、その日は、
魔が差したのか、いや、正直、好奇心も手伝って、つい店の中に入ってしまったのである。

(あなたが男性なら、こんな経験したことありませんか?女性の方でしたらごめんなさい。

何と言うか、人間って、いつもそう真面目に生きるのって、大変ですよね。

私も、学校の教師とはいえ、やっぱり、普通の男でしたw)

なんだか、照明も怪しい光に見えて、少し暗い店の奥に、ススムは通された。

「いっらっしゃいませ」という男性スタッフの大きな声の中、ススムは、ソファに座らされた。

(あれ、結構、きれいな内装だな。わっ、シャンデリアもあるぞ。)

意外と豪華な店だと気づいた。

(やばい、やっぱり、帰ろう。)

そう思ったと途端、

♥「いっらっしゃいませ。お邪魔します。」

と、一人の女性が、ススムの隣に座った。

(どんな店かもわからず、なんだか、高級そうに見える場所に、入ったことってありませんか?

例えば、値段の表記がないお寿司屋さんとか、或いは、やたら愛想よく店員が接してくるのに、会計の伝票見たら、ビックリするような値段が書いてあったりとか。

うん? それって、ボッタクリの店?そう思いましたか?そうです。一度だけ、大学生の時に、好奇心で、繁華街に行って、そんな店に連れて行かれて、怖い思いをしたこともありますw)

ススムは、体が硬くなり、もうUターンして、店を出たくなっていた。


男性客を相手にする、プロのホステスのリップ・サービスには、だまされないぞ。そう思っていたのに、、、

ススムの隣に、ロングドレスで着飾った女性が座った。

ススムは、アルコールも飲んでいないのに、顔が赤くなっていた。

恐る恐る、隣の女性の顔をちょっと、覗き込んだ。

「私の顔に何かついてますかw」

♠「いや、そうではなくて、あのー、こういうお店は初めてなので、緊張していて、つい、どんな女性なのか、見てしまいました。気に障ったら、ごめんなさい。」

ススムは、ますます顔を、真っ赤にした。

「ハハハッ、面白い人。私は、カナです。どうぞ、宜しくお願いします。♪」

(あれ、なんて気さくな人なんだ。話しやすい人だな。いやいや、ここは、男性客をもてなすために、うまく話をしているだけだ。

気をつけないと。だまされないぞ。

とりあえず、時間が来たら、すぐ帰るぞ。)

「お名前は?」

「はい、ススムと言います。」

「随分、礼儀正しいお方ですね。お仕事は、何をされていらっしゃるのですか?」

(いや、あなたも十分、礼儀正しいと、思いますよ。)

「高校教師です。英語教えています。」

♥「キャー、すごい!先生なんですね!」

「いや、それほどでもありません。」

ひとしきり、話が進んだが、ススムは、自分がどこにいるか、忘れていた。

恥ずかしい話だが、楽しかったからである。

それに、カナは、熱心にうなずきながら、ススムの話に耳を傾けてくれていた。

よっぽど、彼女の方が聞き上手で、カウンセラーのようでした。⇒第6話でもお話したように、私は、ある大学のカウンセリング研究所で認定カウンセラーの資格を取っていました。

そして、一言、

「なんて素敵な先生なんでしょう!」

そう言われたススムは、自分の仕事の話を人にしたことがなかったので、少し、有頂天になっていた。いや、こんな風に褒められて、嬉しかった。

(あなたは、自分のことを、人に話したり、聞いてもらうことはありますか?

私は、ある意味、頑固だったので、自分のことを人に話すことは、ほとんどなかったです。)

ススムは、カナの褒め言葉を聞いて、

(いやいや、違う違う。相手は男性客を相手にするプロだ。リップ・サービスに決まっている。)

そう思おうと努めた、、、

いつの間にか、決められた1時間が来た。ススムは、帰ろうとした。その時、相手をしてくれたカナが、名刺をくれた。

ススムは、正直、こんなものをもらっても、困るだけだと思った。

カナは

「ありがとうございました。また来てくださいね。」と明るい声で言った。

でも、彼女には申し訳ないが、ススムは、もうここに来ることはない、いい社会勉強になった、そんな思いで、店を後にした。



1ヶ月が過ぎた日曜日。

今日も、またもや、暇になってしまった。もう部屋の掃除も、洗濯も、買い物も済ませたし、一日、英語の勉強もやったし、夕飯も自分で作って食べてしまったし、、、
(私は、一人で何でも出来てしまうのですw)

♠(こうやって、一人でいるのは、あまりいいことじゃないよな。)

なんとはなしに、机の上に置いてあった、カナがくれた名刺に手を伸ばした。

それを眺めていたら、カナのあの屈託のない笑い声と優しい言葉が、頭に浮かんできた。

(まっ、もう一回位行ったって、バチが当たるわけでもないし。)

そう思うやいなや、部屋着からちょっと小洒落た服に着替えて、いそいそと、例の店に向かったのである。

「いっらっしゃいませ!」

男性スタッフの大きな声が、店内に響いた。

それを聞くのはちょっと、嫌ではあったが、我慢して、案内された席に座った。

「ご指名はございますか?」

そんなことを訊かれて、恥ずかしかったが、勇気を出して、ススムは言った。

「あのー、カナさんをお願いします。」

ススムは、名刺に書いてある名前を指差しながら、言った。

「かしこまりました。」

しばらくすると、カナが現れた。

「いっらっしゃいませ。ススム先生、来てくれたんですね。」

「いや、その先生は、止めてください。」

「わかりました。じゃあ、なんてお呼びすればいいですか?」

「じゃあ、ススムさんでお願いします。」

正直、何を自分はやっているのだろうと、思い始めた。
(何だか、男として、下心満載で、それを隠すかのように、女性を前に、声をかけている感じがして、ちょっと自分を責めた。きっと、ニヤけた顔になっているに違いない。

なぜなら、その女性は、とても綺麗だったからである。)

(カナ:身長、約155cm 体重、約45kg、黒髪のロングヘア、童顔、大きい目、可愛い声だが、少しハスキー。ススムには、どストライクのタイプ。

そんなタイプの女性が、目の前に現れたら、あなたは、どんな気持ちになりますか?そりゃ、緊張もするし、ワクワクもしますよね。)

ウイスキーの水割りを飲むうちに、気持ちも和らぎ、ついつい、その綺麗な顔をしっかりと、眺めてしまった。すると、どうも顔色が良くないように見えた。

それまで、たくさんの生徒たちを見てきたので、そんな勘は、結構鋭くなっていた。

つい、ススムは訊いてしまった。

「顔色良くないですね。大丈夫ですか。どこか、具合悪いんですか。」

ちょっと、遠慮がなかったかな、と思ったが、カナは、正直に答えてくれた。

「ええ、本当は、あまり調子良くないんです。私、病気を持っていて、膠原病って知ってますか。

もう高校生の頃から、ずっと、苦しい思いをしてるんです。

身体中が痛くて、特に関節痛がひどいんです。

(膠原病とは、ひとつの病気の名前ではなく、いくつかの病気が集まったグループを表す言葉。皮膚筋炎、結筋性多発動脈炎、関節リウマチ等が含まれる。

慢性の炎症性疾患が多く、発熱、関節炎、全身倦怠感などの全身症状がある完治しない難病である。)

だから、正直、生きていくのが大変で、だって、一生治らないって、お医者さんに言われているのです。アハハ。」

無理して、彼女は、笑った。

「なら、なんで、夜のこんな仕事しているんですか!?昼間の事務仕事とか色々あるじゃないですか。

少し、自分を労ってあげた方が、良いと思いますよ。」

つい、ススムは力んでしまった。

「あっ、失礼なことを言いました。申し訳ありません。」

(こんな時、あなたなら、どんな風に、会話しますか?

男性客を相手にしているホステスとは言え、やはり、客としてではなく、人として、純粋に、相手の話に耳を傾けることが、大事ですよね。

でも、つい、自分のことを棚に上げて、事情も知らずに、相手を非難するようなことを、口にしてしまいました。

本当は、こんな時にこそ、カウンセラーとして、相手の話を傾聴することが、できれば良かったのですが、アルコールが回り、冷静になれなかったのです(*_*;

それと、私は無骨というか、生真面目というか、その、、、

女性と話すことが得意ではなく、

女性とお付き合いするのも、経験として、少ないので、

生徒の前では堂々としていられるのに、プライベートは、本当に、情けない男なんです。

恋愛って、学習するものではないですしね。

だから、一人でいるのが、気が楽なんですが…w)


カナに隠されていた辛い人生を知ることになる。 


彼女は、隣の席で、少しうつむき加減になった。

「ススムさんは、話しやすいので、私のことを、きちんとお話しますね。」

顔を上げた彼女の顔には、笑みが浮かんだが、作り笑顔に見えた。

「あのね、、、私、小さい時から、父親に嫌わていて、

それで、何かあるたびに、父親が怒ってくるの。というか、手を出されたこともあるんだ。

母は、いつも物静かで、父が私に手を出しても、何も言ってこないの。

母は、私のことをどう思っているかはわからない。」

 

気がつくと、彼女は、丁寧な話し方を止めていた。自分の身の上を話すのに、自然体が良かったのかもしれないが、独り言を言っているようにも、ススムには聞こえた。

「それから、、、高校生のある時に、体調が悪くなって、学校早退したら、父に、ものすごく怒られて、なんで、こんなに早く帰って来るんだって、突き飛ばされたの。」

ススムは、聞いていて、だんだん、悲しくなっていった。

彼女は、堰を切ったように、話をやめることはなかった。

「その後、病院に行ったら、膠原病って言われて、

前にも、ススムさんには、言ったと思うけど、ずっと体全体が痛いし、本当に辛いの。

でもね、自分の体を考えて、仕事をしないというのは、ありえないんだ。

だって、父親がいつも家にいるし、、、父はね、大学で数学教えている先生なんだ。

大学の授業が終わると、すぐ帰ってくるし、ずっと、家にいるから、見張られている感じなんだ。

だから、私が、家にいないようにしているの。夜の仕事が一番なんだ。

昼は、ずっと寝ていればいいし、時間になったら、夜は仕事に出るから、父には、顔を合わせることはないから。

もちろん、この仕事をしていることは父は、知っています。大反対。って、当たり前か。

でもね、私、お金が必要だし、結構医療費って、かかるんだ。

お小遣いも欲しいし。

もちろん、父親には絶対に、頼りたくない!」

人には、それぞれ、人にはなかなか話せない悩みがあることは、ススムもわかっていたが、彼女の話を聞いていて、正直辛かった。

「ごめんなさいね。変な話して。

でも、なんだか、今日は、スッキリした。聞いてくれて、ありがとう。」

話を聞く位なら、いくらでも、聞いてあげたいと、ススムは思った。

そんなススムに、男性スタッフの声が、かかった。

「お客さん、そろそろお時間です。どうしましょう。」

ここは、普通のパブでも、バーでもなく、時間で、料金を払うシステムのクラブだった。

ススムは、一人で、考え始めた。まだ、彼女のそばにいて、励ましてあげたいと、でも、ずっといるわけにはいかない。

(このような店は、時間制で、1時間いくらとなっているが、さらに、残りたければ、延長料金が、発生するのである。

しかも、ここは、高級とは言えないが、それなりのステータスのあるクラブと言えるような店だった。

なので、初回は、サービスで安く済んだが、2回目以降は、1時間いても1万円と、とんでもない金額に、なってしまうのだった。)

カナが、物欲しそうな目で、こう言ってきた。

「よければ、もう少し、いてほしいんだけど、、、

ススムさんが、ここにいてくれるだけで、

心和らぐし、お店でお仕事していることも忘れてしまうぐらいなんだ。

本当に、辛いことも、何だか、忘れられるんだ。」

(こんなことを言われて、僕は、どうしたらいいんだろう?

もう少し、そばにいてあげたい。)

ススムは、悩んでいたり、困っている人がいると、手助けしたくなる性分だった。と言って、湯水の如く、お金が湧いてくるわけでもなく、財布の中を覗き込んだ。

「ごめんなさい。やっぱり、帰ります。


でも、これ僕の携帯の電話番号なので、何か困ったことがあったら、遠慮なく、連絡ください。」

こうして、ススムは、後ろ髪を引かれる思いで、店を出た。

ススムには、店を出る時、送り出してくれた彼女の顔が、心なしか、寂しそうに見えた。



1日、2日、3日と、時は過ぎたが、ススムの心にあるモヤモヤした気持ちは、どんどん膨らんでいった。

結局、ススムは、金輪際と、決めていたのに、またカナに会いに、店に行ってしまった。そして、一ヶ月の間に、7回も店に足を伸ばしてしまった。
(入れ込むってこういうことですよね?恥ずかしいw)

彼女の助けになりたいと、思って店には行ったものの、やっぱり、素敵な女性と、楽しくお酒が飲めて語らうことが出来る、そんな機会がないススムは気持ちを抑えられなかったのである。

(こんな風に、自分のことを分析するのも、なんだか、可笑しいですよね。

笑ってやってください。)

それでも、家に帰ると、

(こんなことをしていてはいけない。高いをお金を払って通い続けるなんて。愚の骨頂だ!)

と考えざるを得なかった。

何回も、自問自答し、ススムは、悩むのだった。そして、思い直して、ある夜、店に電話を入れた。

ススムは、カナに謝った。

「ごめんなさい。お店には、もう行きません。楽しいけど、金銭的に、無理です。

本当に、ごめんなさい。さようなら。」

そう言うなり、相手の言葉も聞かず、ススムは、一方的に電話を切った。

(これでいいんだ。)

ススムは、自分に納得するように、言い聞かせた。


カナの力になりたいと、ススムは一大決心をする。


もうカナのことは、考えないほうがいい、そう思い、忘れるためにも、今まで以上に、仕事に打ち込んだ。

♠(やっぱり、生徒たちと一緒にいると、幸せだなあ。)

そうやって、少しずつだが、カナへの思いが薄らいで行った、気がした。


ある日の土曜日の夜、ススムの携帯が鳴った。

着信番号を見ると、それは、カナからだった。

一瞬、ためらったが、電話のマークを押し、話した。

「もしもし、どうしました?カナさんですよね?」

か細い弱々しい声で、彼女が返事した。

「もしもし、ススムさん、電話して、ごめんなさい。

今、お忙しいですか?もしお時間あったら、ススムさんとお話がしたいんです。

よろしかったら、お店に来てほしいのですが。」

ススムは、すぐに思った。これはいわゆるホステスからの営業の誘いだと。と言って、営業なら、もっと元気に話してくるかもしれなかったが…。

ちょっと、悲しかったが、きっぱりと言った。

「いや、ごめんなさい。お店には、もう行けないです。

前にもお伝えしように、お金に余裕がありません。すみません。」

ススムの言葉を黙って聞いていた彼女が、妙なことを言った。

「じゃあ、今日、遅い時間だけど、お店が終わったら、どこかで会ってくれませんか?」

♠(あれ、営業の電話じゃないのか?)

カナへの気持ちを封印していたススムだったが、電話をもらって、気がついた。

やっぱり、好きなのかなと。

そう思ったら、居ても立っても居られず、ススムは、会うことに同意した。

二人は、深夜、ファミレスで会った。

ススムはコーヒーを、カナは、アイスティーを注文した。

彼女は、夜の仕事を終え、疲れている様子だった。それに、辛そうにもしていた。きっと、例の病気(膠原病)で体が痛いに違いない。

「こんなに遅くに、ごめんなさい。でも、ありがとう。会ってくれて。」

ススムは、いや大丈夫だよ、という顔つきで、訊いた。

「どうしたんですか?」

彼女は、真顔で言った。

「もう本当に辛くて、家には帰りたくないの。父がまた私に怒鳴ってくるし、

いつまで恥ずかしい仕事をしているんだ、いい加減にしろって、

体は痛いし、しょうがなく、お店に出てるけど、限界なの。

でもね、ススムさんとお店でお話していたときは、何でも話せるし、

何ていうか、ホッとするというか、安心するというか、、、

一緒にいると楽しいし、元気が出るんだ。嫌なことも忘れられるし、、、

そう、私のプライベートのことは、誰も知らないんだ。

ススムさんにしか話してない。他のお客さんは、誰も知らない。

あっ、何だか自分ばかり、、、ホント、ごめんなさい。

でも、自分でもよくわからないけど、こんな風に、男の人のこと、考えたことなかったし、、、

きっと、私が夜の女だから、胡散臭いと思っているわよね。

でも、それもしょうがない。こんな仕事をしているのだから。

今日は、ホントにありがとう。ススムさんも、お仕事で、疲れているでしょ。

少しでも、こうやって、お話聞いてもらって、うれしかった。

じゃあ、私、帰るね。

ススムさんも
気をつけて帰ってね。」

彼女の話は、少し支離滅裂なところもあったが、ススムは、一生懸命に聴いた。

もっと、何かを伝えがっているようにも見えたが、遅い時間なので、遠慮したのだと、ススムは、勝手に思った。

話の合間に、ススムは

「そうなんですね。それは大変ですね。辛いですよね。

でも、そうやって、僕のことを思っていてくれて、うれしいです。」

と、言ったものの、どうしてあげることも出来ないと、心の中で、思っていた。

ススムは、しかたなく、帰ることにうなずき、二人は、ファミレスの出口に向かった。

ススムが会計を済ませた。

そのまま、黙ったまま、二人は駐車場へと歩いた。ススムの車が置いてあったからだ。

彼女は、タクシーで帰るという。

駐車場を照らす弱い光の明かりの下に来た。駐車料金を機械に入れるためだった。

その様子を見ていた彼女が、財布を取り出し、小銭を出した。

「来てもらったんだから、私が出すね。」と、言った。

すると、小銭がカナの手からこぼれ、地面に散乱した。

二人は、落ちた百円玉を拾おうと、それぞれが、手を伸ばした時、

ススムは、彼女を手を取って、自分の方へと引き寄せた。

夜の外気は冷たかったが、彼女の唇は、暖かった。

しばらく、二人は離れることはなく、唇を重ねていた。

ススムは自分の行為に驚いたが、もう気持ちを抑えることが出来なかったのだ。

それに、カナが応えくれたことも、うれしかった。

こうして、二人の気持ちが繋がったのだ。

(きゃー、書いてしまった。本当に、恥ずかしいw)


二人は、しばらく、黙って、体を寄せ合っていたが、ススムから、帰ろうと、言った。



家に帰ると、ススムは一睡もしないで考えた。

普通なら、ずっと、恋人として、付き合っていけばいいだけのこと。

でも、カナの家のこと、無理して夜の仕事を続けていること、カナの病気のこと。そんなことを考えると、普通に付き合うことは難しい。

特に、家と仕事場の往復で、精一杯なカナだったので、、、

何が良い方法か、ススムなりに、一生懸命、考えた。そして、出した答えは、一緒に住むことだった。

もちろん、普通なら、そんなことを相手に言うなんて、早いかもしれない。

でも、ススムは、男として、カナを守るためには、それが一番だと思ったのだ。

翌日、ススムは、カナに電話した。

「考えたんだけど、カナちゃんの役に立ちたいんだ。

そばにいて、支えてあげたい。

それでね、すぐでなくていいけど、一緒に住むのはどうかな?

生活費は二人でも、一人分とあまり変わらないし、

それに、お父さんと離れられるでしょ。

夜の仕事も、そんなに無理しなくてむ済むし、、、

そう、僕を頼ってほしい。

必ず、力になれるから。」

 



いつの間にか、カナさんが、カナちゃんと、ススムの呼び方が変わっていた。

 

その言葉を黙って聞いていたカナは、ちょっと硬い感じで言った。

「そんなに風に考えてくれるのは、うれしいけど、、、

でも、一緒に住むとか、ちょっと無理です。

確かに、父親は嫌いだし、家には居たくないけど、

ススムさんに、迷惑はかけられない。

こんな体だし、それに、人に頼るのって苦手なんだ。

なんか、ワガママでごめんなさい。」

(僕を頼っているじゃん。頼っているから、お店に来てほしいとか、仕事の後に会ってほしいとか、言っているでしょ、、、

でも、やっぱり、こんなことを言うなんて、早すぎたかな。)

でも、諦めずに、ススムは、もう一度、言ってみた。

「迷惑なんかじゃないよ。やっぱり、カナちゃんのことを考えたら、僕が、支えることが一番だと思う。僕を頼っていいんだよ。だから、今すぐでなくていいので、一緒に住もうよ。」

「気持ちは、本当に嬉しいけど、しばらくは、普通にお付き合いしたい。」

「でも、じゃあ、普段どうやって会うの?」

「そうだけど、、、」

カナは、困った声になった。

ススムは、カナには、言ってはいけないことを言った気がした。

ススムは、何も言えなくなっていた。

電話越しに、沈黙が襲った。

ススムは、その沈黙の間、しばらく考え込んで、思い切って言った。

「うん、わかった。

じゃあ、、こうしよう。

出来る限り、僕が店に客として行くよ。

やっぱり、カナちゃんのそばでいてあげたいし、力になりたいから。

気にしなくていいよ。大丈夫だから。

あっ、それから、少しだけど薬代も出すね。

本当に大丈夫!

もうそう決めたから、安心してね。」

結局、ススムは、もう強く言うことは出来なかった。カナの気持ちを優先した方がいいと、後先も考えず、こんな提案をしたのである。

「ごめんね。私って、頑固だから。

でも、本当にいいの?無理しないでね。

私は、今の生活を変えるのは、むずかしいから。私に、合わせなくてもいいわよ。」

「何を言っているんだ!

僕は、どうであれ、カナちゃんの役に立ちたいんだ!」

「うん、わかった。ありがとう。でも、本当に無理しないでね。

それと、薬代は心配しないで。それくらいは、大丈夫だから。」

二人の会話は、こんな結論で終わった。

ススムは、自分の思う通りには、ならなかったが、これでいいんだと、自分に言い聞かせた。
なぜなら、カナのことを一番わかっているのは、自分だし、どんな形でも、好きな女性のために、生きられたら、本望だと、考えたからである。

(あなたは、この展開をどう思われますか?

恋は盲目とは言いますが、普通じゃない恋愛ですよね。

それに、私は、ばか正直ですよね。ひょっとしたら、騙されているんじゃないですかと、あなたは思われるかもしれませんね。

ただ、騙されるという考え方は、私の心にはないものです。

人を信じることが大事だという考えが、ススム家のDNAにありますし、そう教えられ、私は育ったのです。

それに、カナは、私を思ってくれているという実感は、確かにありました。

なので、人にはどう思われてもいい、という覚悟を持ちました。)


*さて、当時の自分が、なぜそのようにカナに言ったのか。

それは、私には、もともと男として自信がなかったということが挙げられます。

また、教師になってから、ずっと心理カウンセリングを学んでいて、その教えで、人に対する接し方に影響を受けたこともあると思います。

つまり、相手(クライアント)の言葉に耳を傾ける、自分(カウンセラー)は、決して自分の考えを言わない。そんな考え方(カウンセリングマインド)が、私の中に、常にあって、大切な人(生徒たち、恋人)には、相手の考えを優先しようとするところがあったのです。

でも、一番の理由は、ススム家の教えだと思います。特に父からは、人ために生きることが、大切だと教わりました。自分のことより、「人様」(父はよくこう言いました。)を大切にしなさい。「人様」を立てなさい。そのことで、自分たちは、生かされるのだと。

そして、父は自分の人生で手本を見せてくれました。

そんな教えを受けたススムは、実際に、高校教師として、生徒たちのために、生きました。

その経験から、人は、自分の力で成長できることを知りました。

また、私はその手伝いをしているに過ぎないと。

だからこそ、当時の私は、カナに強く言うことはせず、カナの気持ちを優先しようと思ったのだと、思います。

では、今の私なら、どうするかなと、考えてみました。

カナのために、全力でカナを説得しようとしたと思います。

カナを守れるのは、私しかいないからです。

なぜ、今は、そんな風に考えられるのか。

それは、ある方との出逢いによって、自分に自信が付いたからです。

私は、高校教師として、人気のある先生でした。それが逮捕によって、すべてを失い、大きく自信を失っていました。その後、それこそ、おどおどして、生きていたと思います。

ところが、ある方(ビジネスで大成功を収め、人のために生きていらっしゃる、利他的な素晴らしいお方です。)に出逢い、私の暗い過去を話したところ、全く否定するどころか、おどろいたことに、一緒に泣いてくれました。

共感してくれたのです。

さらに、そんな過去があるにもかかわらず、私を高く評価して頂きました。そして、これまでの過去を認めて頂き、私は今よりも、もっと人間性を高めて行くことが出来ると、お話してくれました。

こうして、私は、この方から直接、頂いた言葉と、温かい心に触れて、自己肯定感を持つことが出来たのです。つまり、人として、自信を持てるようになったのです。

もちろん、自ら行動し、自信が付いたことも事実です。しかし、その方の存在無しでは、行動出来なったことも事実です。


第9話は、ここまです。いかがでしたか?

第2部は、第1部とは大きく違いますよね。

言ってみれば、恋愛ストーリーです。

でも、自分の恋愛を話すのは、めちゃくちゃ、照れます(*_*;

といって、まだ、次の回に続きますがw


<<次回予告>>

ススムは、自分の決意通りにカナの店に会いに行く。制限された逢瀬であったが、二人の気持ちは
どんどんと深まっていく。

つづく
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