こんにちは。
オトメと申します。☺
今このページに辿り着いているあなたへ、貴重なお時間を割いていただき大変感謝しております。
プロフィールを読まれた方でもそうでない方でも、きっとこのサイトの何かにご興味を持たれてお越しくださったのだと信じております。
このページは、ここ最近の数年のオトメのフロンティア人生を連載ストーリー化した第四話が掲載されています。
第三話にて、アメリカ社会はなんともエゲツない一面を持つ、という話をしました。第四話から第六話にかけて、私オトメが実際にどんなエゲツない目に会ったのか、もう少し具体的に描いていこうと思います。
日本にいてももちろん人種差別などありますが、一般的な日本人として日本に暮らしているとそれほど身近に感じないものだと思います。
アメリカで20年間過ごした私オトメも、多少の差別的な扱いは受けましたが、
これぞアメリカ社会における根強い人種差別
というレベルの扱いは実にアメリカン・ドリーム実現の時点まで受けたことはありませんでした。
2000年にリリースされた「ザ・ダイバー」というハリウッドの映画をあなたももしかしたらご存じかと思います。
アメリカ海軍における、初めての黒人水兵として、過酷で理不尽な、イジメに等しいレベルの課題を次々と突きつけられ、それでもその一つ一つを忍耐強く、諦めずにこなしていく、実際にあった話をもとに作られた映画です。
その執念は本当に圧巻でしたが、私オトメもまさにそういった組織的なレベルでの人種差別行為によって、危うく手に入れかけた「アメリカ政府に認められる一人前の研究者」という立場からふるい落とされかけたんです。
Contents
オトメのザ・ダイバー体験
アメリカ政府から研究費を授与されるにあたって、最終的な通知を頂く前に、いくつか行わなければならない手続きというものがあります。
その手続を遂行する際に、自分の組織の研究の事務および倫理の事務の人間たちと一仕事することになるわけです。
億単位の研究費をアメリカ政府から授与される場合、なんと総合研究費の約60%が追加で所属する組織(大学・研究所)に入ってくることになります。
インフラコストといって、要はその研究所が授与された研究プロジェクトを遂行するにあたって然るべきサポートを行えるよう、追加でプラス60%のインフラサポート費が直接所属先の組織への収入として入ってくるのです。
だからアメリカ政府から研究費を稼ぐ研究者というのは、所属する組織から見たら
まさに金の卵。
一気に組織全体から崇拝の目で見られ、チヤホヤされるようになるのです。
だから私オトメも当然そんなふうに大事に扱われるのかと思いきや…!
なんと信じられないかもしれませんが、
チヤホヤされるどころか、その全く逆の、
まるで例の映画「ザ・ダイバー」な事態
が私を待ち受けていたのです!
まず、政府から研究費を授与されるにあたって、必要書類を研究とか倫理に関係する事務の人間たちと一緒にそろえなくてはなりません。
従って、まず研究の事務の方へ政府からの要請があったことを私オトメは誇らしげに伝えたわけです。
…ところが
反応がない。
返事が来ない。
いくら待っても何も言ってこなーい。
実は研究費を授与されるにあたって揃えなくてはいけない必要書類って、一週間くらいで揃えなくてはいけないんですよね。
だから一日たりとも無駄にはできないわけです。
なのに、何も返事がない。
一世一代の、アメリカン・ドリーム実現の最終段階において、まさかの障害。全く予想もしていなかったところからの
シカト攻撃。
その時は理由も分からず必死でしたから、仕方がない、と研究の事務を通さず倫理の事務の方へ個人的に連絡を取りました。
それも、倫理の事務に提出する書類が一週間しか時間がない割に膨大であり、またそれに緊急に目を通してもらって、コメントを貰い、それに応対して再提出して…なんてのろまな亀みたいなやり取りが続くんです。
ある程度の遅れを予想していましたが、それでもなるべく早く、と個人的に連絡をとっていたところ、突然
怒りのメイル
が研究事務の方から送られてきたんです。
その内容も、「私が“いつものごとく”ジタバタ波風を立てるから、進むべきことも前に進まない、邪魔ばかりしている」というなんとも理不尽な、一方的に私の落ち度(というか、落ち度じゃないし)を責め立てる内容であり、
しかも当時所属していた大学で、
私のボスに当たる人間に、そのメイルがコピー
されていたんです。
全く心当たりのない、というか、はっきり言って完全にでっち上げ、私という人間をこの場に及んで陥れようとする、
悪意に満ちたイジメ以外何者でもない行為
としか解釈のしようがありませんでした。
それも、相手のシカト攻撃から全てが始まり、授与されかけた数億円の研究費を逃さないために、致し方なく甘んじた行動が、「いつもの私の組織を乱す行動」として、いきなりボスにチクられ、悪者扱いされる要因となったのです。
あまりにも悪意に満ちた行為に信じられない気持ちで唖然(あぜん)とするばかり。
ここで英語風にその時の思いを表現するとすれば、I was completely lost and at my wits’ end.って感じでしょうか。
気が動転して、他の組織に所属する研究同僚に真夜中に電話で相談したところ、
「そんなところにいちゃいけない。早く転職先を見つけろ。」
なんて、あまり彼女らしくない、はっきりとした強いアドバイスをもらいました。
外部の人間にとっても、どこからどう見ても、誤解、とかそういったレベルでの解釈のしようのないほどはっきりと酷い事態だったのでしょう。
あまりに気が動転して、その後どのように状況を切り抜けたのか、あまり記憶に残っておりません💦。
ただ、政府の役人でこの研究費を授与するにあたって大きく貢献してくださった、例のダイアモンド氏(詳しくは第二話参照)に泣きながら
「こういった事務的な手続きにおいて研究費が授与されなくなることが仮にあるとすれば、それは全て私の力不足のためであり、そんなアホみたいな事態になった暁(あかつき)には、
ダイアモンド氏のご恩を仇で返すようなことになり、申し訳ないでは済まされない、なんて言ったら良いかわからない。」
といった内容のメイルを送ったりもしました。
ダイアモンド氏からは、
「遅れたって大丈夫だよ!なんにも心配することはない。」
と少し経ってからお優しいお返事をくださいました。
あれはもしや組織的人種差別?
その時は事態を切り抜けることで必死だったのですが、あとから回想して、あの一件は実は
組織レベルでの人種差別だったのではないか
と思い当たるに至りました。
それというのも、当時所属していた大学の機関は、割と大都市に近い場所にあるくせに、その大学の機関が存在する州は文化的にもかなり遅れているとされる保守的な州なのです。
自分が研究者としてトレーニングを受けていた隣の大都市のある州では感じないような、閉鎖的な雰囲気のある場所です。
隣の大都市のある州では本人の見かけがどうか、よりも、どんな組織からどんなトレーニングを誰から受けてきたのかが重要視されるのです。
それはおそらくそういった大都市にはありとあらゆる人種や文化の背景を持つ人間が集まり、見かけなどによる違いがあまり目立たないのだと思います。
またありとあらゆる人間達が出たり入ったりするので、本人たちも自分の助けにさえなってくれればあとはどうでもいい、とまあ皆さん忙しくされているわけです。
しかし、当時所属していた大学の機関においては、外国人であり体も小さく声も高いアジア人女性の私に対し、やはり周りよりも一段低く能力を判断する傾向にあったと思います。
※この写真に書いてある言葉には、つまり人種差別というのはコロナ禍のように疫病としてどこにでも存在している、という想いがこもっていると思います。
実際に、数年後においては研究キャリア的には私のほうが上回るに至った同世代の白人の女性同僚にも、命令口調で共同研究の要請をされたりしました。
ラビニア「あなたと私は研究内容が近いから、是非一緒に共同研究したら良いと思うのよ」
私「ああ、ぜひとも!よろしくおねがいします。」
ラビニア「それでね、まずはあなたはXXXをしたらいいと思うのよね。どう?XXXしなさいよ。そうしたらまた今度会議して次のステップを決めましょ。」
私「…(は、何様?)」
また、億単位の研究費がなかなか降りず、焦っていろいろな研究内容に手を出して、研究費の申請をしまくっていた当時の私に対して業を煮やしたボスが、私を他の白人女性同僚と面会させたのですが、その時も
イライザ「あなたね、そんなにやたらめったら申請しまくっても無理に決まっているじゃない。」
私「そうなんですかねえ。とにかく焦ってしまって。」
イライザ「あなたが“頭のいい”人間だってことくらいは私もわかっているつもりよ。」 ※これは、パティシエに向かって「あなたがお菓子を作れることくらいはわかっているつもりよ。」というのと同じくらい、場違いというか完全に相手を見下した発言になります。
私「…(は、何様?)」
といった具合に、あまりにも高圧的で上から目線の同僚たちの対応にさらされ続け、研究費もなかなか降りなかった当時の私は実際にどんどん自信をなくしていきました。
それでもとにかく国家研究申請書を作成・提出し続け、データ分析・論文作成・提出、と自分に出来ることをし続けたわけですが…
さらにそのあたりから研究事務との関係も悪くなっていったのです。
やはり業を煮やした上司(第六話にまた登場)が研究事務の黒人女性を私専用の事務とし、私をしっかり指導するように、と申し付けました。
アメリカの研究キャリア事情というのは本当に厳しいもので、国家研究費が降りる確率はなんとほんの10%程度なんです(詳しくは第二話参照)。
実は今だから言えることですが、研究者として確立した人間たちは皆私のようにとにかくがむしゃらに研究ネットワークを広げ、
ありとあらゆる研究内容・課題を打ち立てて、いくつかのヒットがでるようになるまで研究費の申請をしまくるような時期が研究キャリアにおいて必ず一度はあるのです。
だから私がしていたことは決して間違ったことではなかった、が、大学からしてみたら目の上のたんこぶだったわけで、
研究費申請をする回数も年に数回、と激減させられ、せっかく確立しかけた研究ネットワークを活用できない環境において、研究キャリアもへったくれもない、と絶望的になりました。
これまで何年も費やして育ててきたネットワーク、彼らとの共同研究内容を真っ向から否定されたわけですから、
「この5年間はいったい何だったんだろう…」
と私オトメは文字通り自分のオフィスの真っ白な壁を無気力に見つめ続けていたものです。
そうやって、少しずつまた他の組織への転職も考慮に入れ、転職用の面接も再開し始めた矢先に(詳しくは第二話参照)、
突然のダイアモンド氏からの報告!
もうそれは嬉々としてしまいましたが、やっと私という目の上のたんこぶを封じ込め、支配するに至った側からすれば、
大学に入ってくる億単位の収入よりも(!)、
この子供みたいな見かけをした生意気な外国人の女が調子に乗っていい気になるのを見るほうが耐えられなかった!!!
というわけなんです。
こういった額の研究費が大学に入ると、大学中にそのニュースが駆け巡ります。
ところが、先程紹介しました白人女性同僚二人のラビニアとイライザも、このニュースを見て見ぬ振りをしていましたね。
彼女たちに同じような快挙があったときは、私は自分のことのように喜んで「おめでとう!」と彼女たちにハグをして声をかけましたがね。
しかし、どうしてこんな理不尽な感情が彼らの中に生まれるのでしょう。
これもその後の経験も合わせて今だから言えることですが、元来アジア人の女性(特に日本人女性に限って)というのは、
強い存在におとなしく盲目的に服従するもの
という強い偏見が実は現代のアメリカ社会にも未だに根強くはびこっているんです。
いわゆる、ゲイシャ・カルチャーってやつです。
だからそういうはずの存在が、自分たちの言うことを聞いて服従するならまだしも、自分たちと同等の立場に立つ、ましてや自分たちを追い越していく、なんて考えるに耐えない、というわけなんです。
これがアメリカ社会に根強くはびこる
人種差別のエゲツない姿
なんですね。
日本でも最近は女性の社会進出やキャリア躍進が応援されるようになり、また同時に性差別的な言動をとる人間に対する社会的批判も高まるようになりましたね。
たとえ後進国や発展途上国においても女性の社会的立場が日本に比べるとはるかに強い場合も多々あります。
アメリカ史上初の女性の副大統領が登場したアメリカにおいて、性差別はもちろん現存するも、日本ほどではないかもしれません。
しかし、アメリカ多人種のるつぼであり、多くの場合日本女性よりも体のサイズや声の大きさが勝るためか、性差別、人種差別、そして外国人差別、という総合的な差別に私オトメはさらされたのだと考察します。
そしてそれと同時に、これも最近になって確信を持つに至りましたが、
私のようにほぼたった一人の力で自分の研究キャリアを切り開き、その研究分野においてリーダーシップを確立していく
数少ない日本女性を応援する人間たちが確実に存在する
ということです。
ダイアモンド氏はもちろんのこと、
私が七年越しで手掛けた研究課題をサポートし、やはり知恵を振り絞って政治的な権力の抵抗を見事押し切って研究費の授与に大きく貢献してくださった、最近になってお知り合いになった政府の役人の方たちなどです。
彼らに共通する点は、みな有色人種であること。
前線に立って戦い抜いてくれたダイアモンド氏と最近お知り合いになった政府の役人の方(仮にここではチェン氏)はふたりともアジア系の男性です。
チェン氏の後ろ盾となって彼を導いたのは黒人女性です。
中立の立場を保ち、人類の進化および人間社会の改善に貢献することを目標に掲げた、民主主義を歌う、そんなアメリカの科学者社会においても、
最後の最後で砦となるのは実は「人種問題」
だったんです。
それでは、次の第五話では実際に億単位の研究費が授与されてからどんな変化が私の研究ネットワークの中で起きたかお話しますね!
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